<東京農業大学 准教授 長島孝行様> 応援メッセージ

私たちは、これまでにインドネシアのクリキュラやアタカスの糸の特性、機能性などを明らかにし、それらを学会だけでなく経済産業省、文部科学省、マスコミなどにも報告してきました。
一番大きな提案は、2005年に名古屋で開催された「愛・地球博」日本ゾーンの中部千年共生村のパビリオンの外壁を日本の「和紙」とインドネシアの「クリキュラ繭」で覆ったものだと思います。これにより、世界中の方々がクリキュラをはじめとした蚕以外の繭にも意識してくれたのではないかと思います。
クリキュラの繭の特徴は黄金という独特な色と強いUVカット、そしてシルクナノチューブの存在による機能性です。ここでは、この特徴を高度に利用したビジネスモデルを少しお話します。
この話しは王妃が愛知博での私のスペシャルイベントの際来日された折にも記者発表したものです。
下の図をご覧ください。クリキュラの繭から少なくとも以下の5つのビジネスが展開できるというものです。
  1. 従来から実施しているクリキュラ繭から糸作り。但し糸の生産は繭の25%程度で金色の再現は特殊な方法を使用しない限り殆どできません。
  2. 繭を引き伸ばし、貼り付けるクリキュラシート作り(これは万博でも利用しました)。 
  3. 繭を金色の小さな小片にし、それを蚕のシルク紙に散りばめたクリキュラシルクペーパー(これは、農大+京都工芸繊維大+阿波製紙との共同特許出願)。現在阿波製紙で製作し様々な用途に使用されつつあります。
  4. また、さらに小さく、そしてクリキュラ繭糸の持つシルクナノチューブをきれいに残したパウダーは、紫外線遮蔽が強く生態親和性に優れたUVカット素材になります。
  5. さらに近年私たちはクリキュラの金色に輝くメカニズムを解明、ナノ構造と糸に含まれる色素が主な要因であることを明らかにしました。この色素はある条件にすると高濃度で抽出されます。しかもパウダーにすることで、保存は勿論、さまざまな濃度での利用も可能です。これが染色剤だけでなく、薬にもなる可能性が生まれてきました(現在特許申請中)。



しかもこれらの技術は、廃液を殆ど出さない「ゼロエミッション型」のビジネスになります。私はこれらのビジネスを是非インドネシア現地を中心に行ってほしいと思っています。そのためにはクリキュラという再生可能資源が住める環境、つまり植樹支援が重要な鍵を握っているのです。多くの方々の支援を期待しています。
もしこれらが実現すれば、人と昆虫と植物の共生という循環型の理想的地球社会システムの成功事例として、インドネシアは、ロイヤルシルク財団は、世界から注目を浴びることになるでしょう。


東京農業大学農学部農学科 長島研究室

准教授 長島孝行